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何か読めば、何がしか生まれる

純文学からラノベまで、文芸メインの読書感想文です。おおむね自分用。

有栖川有栖『月光ゲーム』の感想

(2004年1月読了) 現代日本のミステリをもっと読もうと思い購入。『カーテン』とは対照的な青春群像プラス犯人探しである。まずはあらすじを。 京都にある英都大学に入学した有栖川有栖は、EMCこと推理小説研究会に入会する。四回生で部長の江神二郎、二回…

アガサ・クリスティ『カーテン―ポアロ最後の事件』の感想

(2004年1月読了) 海外の小説にもそろそろ手を出そうと思いポアロものから行くことにする。父がかなりミステリ好きで、エラリー・クイーンやアガサ・クリスティのものは実家にもそこそこあって、この小説はそんな父が「ぜひ読め」と言ってきたものである。…

村上春樹『新版・象工場のハッピーエンド』の感想

村上春樹の随筆か創作か詩(あるいはその複数にまたがった文章)と安西水丸氏の絵を混淆させた本である。「新版」と銘打たれているのは、1983年にCBS・ソニー出版から出た旧版に、「にしんの話」と安西氏の新規画稿を加えたものだかららしい。

法月綸太郎『密閉教室』の感想

(2003年11月読了) 現代日本のミステリを読もうと思って手に取った。法月綸太郎のデビュー作である。まずはあらすじ。 湖山北高校の3年生の教室の1つ、7R(ルーム)は、ある朝、不可解な現象に見舞われる。一番に登校してきた梶川笙子がドアを開けようと、…

花村萬月『あとひき萬月辞典』の感想

それは置いておいて変な本である。「辞典」とある通り、「匂い」とか「音楽」といった言葉ごとに章が区切られ、そこに1つ以上のエッセイなり掌編なりが置かれている。もっと大部になる予定だったようだが、発表先などと折り合いがつかず、全9章というこじん…

夏目漱石『道草』の感想

大学教師の夫とクールな妻。それと金を腐心してもらいに来る老いた養父母に兄や姉。こうした構図は、『吾輩は猫である』を執筆していた頃の漱石の境遇そのままであるとの指摘がある。それまでは自分と似て非なる人物たちを描き続けてきた作者が、最後に完成…

新井満『ヴェクサシオン』の感想

「千の風になって」で有名になった新井満氏による小説である。読んだ当時、既に同曲は発表されていたようだが、私は単に「尋ね人の時間」で芥川賞を受賞した人の作品として読んだ(ちなみに「尋ね人…」は未読である)ように記憶している。表題作と、姉妹編と…

夏目漱石『行人』の感想

『行人』は、あまりメジャーでないように感じるが、『彼岸過迄』(当該記事)に続き、一般的に言われる後期3部作の2作目とされているようだ(最後の1作は有名な『こころ』である)。

吉行淳之介『原色の街・驟雨』の感想

吉行淳之介を知ったのは『子供の領分』という本によってである。ドビュッシーの曲からタイトルを拝借したこの作品は2003年よりも前に読んだ本の1つだが、どうも手に入れた時のことを憶えていない。いつの間にか本棚に刺さっていた。恐らく大学時代に入り浸っ…

鈴木光司『らせん』の感想

監察医の安藤は、海での不注意で幼い息子を亡くし、別居中の妻からなじられ続け、ついに離婚を言い渡される。そんな彼が解剖することになったのは、不可解な死を迎えた学生時代の友人、高山竜司。死因を心臓の冠動脈の閉塞による心不全とした安藤だったが、…

鈴木光司『リング』の感想

数年前に相当話題になったものを、百円で購入したので今さら(2003年)読む。自分が読んだのは横尾忠則の装丁によるものであるが、いまAmazonを検索してもその表紙は出てこない。当初は「ごちゃごちゃして変な装丁だ」と思ったが、今になってみれば、不思議…

川上弘美『神様』の感想

パソコン通信上で募集された「パスカル短編文学新人賞」に応じて受賞した表題作を筆頭に、『マリ・クレール』誌(フランスのファッション雑誌『Marie Claire』の日本版を、当時中央公論社が出していた模様)掲載の短編も入れて計9編を収録した本である。

夏目漱石『坑夫』の感想

漱石の小説の中でも、あまり話題になることのない作品である。書かれた時期で言えば、『虞美人草』と『三四郎』の間。島崎藤村が書いていた『春』が新聞連載に間に合わず、“つなぎ”として漱石が書いた、という経緯があるようだ。

赤川次郎『幽霊列車』の感想

テレビで『三毛猫ホームズ』シリーズを観た小学生の頃か、あるいは高校の演劇祭で他のクラスが『夢から覚めた夢』を演ったというのが、私にとって最初の赤川体験ということになると思うのだが、ちゃんと本で読んだのは、実のところこれが初めてだと思う。

夏目漱石『二百十日・野分』の感想

雅なタイトルの比較的初期の作品2編を収録した本である。かつては岩波文庫でも同様に構成された本があったようだが、そちらは現在は絶版のようで、自分が入手し読んだのは新潮文庫版である。

島田雅彦『優しいサヨクのための嬉遊曲』の感想

2作入っている本だが、いずれも作者の言わんとしているところは同じようなものだと思う。つまり国家の大事に対する誠実さと、異性(エロス)への興味は両立するか、ということである。もっとも「優しいサヨク…」は左翼的な運動、「カプセルの中の…」は単純に…

夏目漱石『彼岸過迄』の感想

最初に出てくるのは敬太郎だが、意味上の主人公は須永と言っていいのではないだろうか。各短編で、敬太郎は見たり聞いたりしているだけで、主体的に物語を牽引しているわけではない。その辺りが却って面白かった。

江國香織『きらきらひかる』の感想

(2003年10月読了) また漱石を一休みして現代小説。江國香織を読むのも3作目である。 あらすじを軽く。 見合いをして、10日前に結婚した笑子と睦月。笑子はイタリア語の翻訳をやったりやらなかったりし、睦月は内科の勤務医として働きながら掃除や料理をす…

夏目漱石『門』の感想

漱石のいわゆる3部作を扱うのも最後の1作となった。『門』というのは漱石の弟子が適当につけたものだそうで、漱石は「なかなか「門」っぽくならないんだよね(意訳)」と困っていたらしい。そう書いた書簡が残っている。以下あらすじを簡単に。

夏目漱石『それから』の感想

『三四郎』の、どことなくまだ明るさがあった空気から、暗さを帯びた雰囲気に変わっているのがまず印象に残る。九州から来たぴかぴかの20代である三四郎に対して、ずっと東京で屈託した30歳の代助が主人公であることと無関係ではないだろう。

夏目漱石『三四郎』の感想

純朴な地方出身の三四郎が、帝大入学を機にやってきた東京で暮らす様子を描いた作品である。都会に圧倒され、美禰子という謎々のような女性にも翻弄される彼の日々は、アンニュイなシーンもあるが全体的に明るい色合いに感じた。

夏目漱石『虞美人草』の感想

あまり「爽快」という言葉の似合わない漱石の作品群だが、 職業作家としての第1作となったこの小説は、勧善懲悪ものと言って過言でない作りになっている。悪役はもちろん藤尾とその母である。作者の脳裏には、クレオパトラなどのいわゆる“傾国の美女”があっ…

村上春樹『1973年のピンボール』の感想

漱石読みを一休みして、現在に近い小説が読みたくなったので。村上春樹の2作目である。前作『風の歌を聴け』の直接の続編といっていい内容だ。

夏目漱石『明暗』の感想

『吾輩は猫である』を超える分量(約600ページ)は、漱石の作品中で最長だろう。初期に比べると文章はさらに洗練され、会話文が多いためもあって分量にそぐわぬ速さで読み終えた。

夏目漱石『倫敦塔・幻影の盾』の感想

漱石の初期短編を7つ収録したものである。元々は『漾虚集(ようきょしゅう)』という名でまとめられた由。

夏目漱石『草枕』の感想

『吾輩は猫である』(当該記事)の直後に執筆されたとされている小説である。しかし、毛色はかなり異なっている。『猫』は文明論、こちらは芸術論という違いはあれど、それらの評論を漱石の和・漢・洋の知識をフル活用して本筋そっちのけで展開している点は…

夏目漱石『我輩は猫である』の感想

文庫で500ページにも及ぶ大部だが、これが面白い。博学な猫の語り口はかなり難しい部分もあるが、それでも読みやすいし、猫が語るということそれ自体が一つの滑稽になっている。

灰谷健次郎『兎の眼』の感想

灰谷健次郎が教師生活を経て書いた最初の小説。大阪の工業地帯、塵芥処理場の側にある小学校と、そこで学ぶ子ども達、教師、そして住民たちの話である。

長野まゆみ『夏至南風』の感想

ミステリ小説のような要約になってしまったが、これはミステリではない。 それにしても、これまで私の読んだ長野作品とはやや違う趣きである。それは、夏至南風(カーチーベイ)という沖縄言葉を用いたタイトルや、華南(中国南部)あたりをイメージした街や…

村上龍『希望の国のエクソダス』の感想

一読、膨大な取材によるものであることは分かる。政治・経済からIT技術の細部まで行き渡った描写は、もちろん創作は入っているだろうけれど読み応えがある。

川端康成『雪国』の感想

言わずと知れた小説である。川端のノーベル文学賞受賞の審査対象となった。 舞踊研究の真似事をしつつ、実態は妻子持ちながら親の財産で暮らしている島村は、旅先の越後湯沢で駒子という娘と出会う。

田中康夫『なんとなく、クリスタル』の感想

長野県知事(2003年当時)のデビュー作という意識で読んだ。1980年6月。東京で、女子大生をしながらファッションモデルもしている由利は、同じように大学生でキーボード奏者として注目され始めている淳一と共に暮らしている。しかし、淳一はコンサートの遠征…

池田満寿夫『エーゲ海に捧ぐ』の感想

「エーゲ海に捧ぐ」。妻のトキコと離れてサンフランシスコのスタジオで仕事をしている彫刻家の「私」。愛人のアニタ、その友人のグロリアがいるところへ、新宿の妻から国際電話がかかってくる。側に女がいるだろう、いない、の押し問答。

花村萬月『ゴッド・ブレイス物語』の感想

処女作である表題作と、もう一本「タチカワベース・ドラッグスター」という短編を収める。文庫で読んだのだが、ハードカバー版の表紙がとても良いと思ったので上の画像はそちらのものである。

宮本輝『螢川・泥の河』の感想

「泥の河」は死と生の凄絶さと美しさを描いている。…ん?「螢川」も同じか。ただし舞台が前者は夏、後者は冬(最終的には初夏だけど)なので、作品のイメージはやや違う。

池澤夏樹『南の島のティオ』の感想

シリアスな文明論だった処女作『夏の朝の成層圏 』と対を成すような、ほんわかとした南の島の自然と精霊と、戦争の記憶という感じだろうか。話に出てくる人はほとんどが呑気者である。

梶井基次郎『檸檬』の感想

「檸檬」は高校の教科書でも読んだが、これはその他にも短編を収録している。同様の本は各文庫から出ていて、収録作に若干の違いがあるようである。自分はなんとなく新潮文庫で読んだ。

大岡玲『黄昏のストーム・シーディング』の感想

(2003年6月読了) 氏の処女作「緑なす眠りの丘を」と表題作の中編2本を収録している。ちなみに氏は大岡信の子息である。だから何というわけではないが。 以下、それぞれ簡単に触れる。 「緑なす眠りの丘を」。何の不自由もない大学生の「ぼく」が纏うのは、…

江國香織『冷静と情熱のあいだRosso』の感想

かつての恋人、順正を忘れようと、ミラノでジュエリー屋のアルバイトをして、図書館の本を読みながら、“完璧な”アメリカ人の彼氏と暮らす女性の話。彼女の名前あおいも、作者の名前のもじりか。KaoriにはAoiが含まれている。

辻仁成『冷静と情熱のあいだBlu』の感想

青は、阿形順正(あがた・じゅんせい)というちょっと作者を思わせる名の、絵画の修復士をしている青年の“流浪と再生”風の物語。流浪といっても物理的な移動はイタリア国内と東京くらいで、精神的な流浪というべきだろうか。

宮部みゆき『本所深川ふしぎ草紙』の感想

「ふしぎ」と付きながらも、多くは下手人や真相を追う、どちらかというと「不思議な事など何もないのだよ」(京極堂)と言わんばかりのミステリ仕立てになっている。

池澤夏樹『夏の朝の成層圏』の感想

氏の39歳の処女小説である。詩やエッセイなどはこれ以前にも書いていたらしいが。とある日本人が船から落ち、漂着した南方の島でのサバイバルと、孤独を愛する映画俳優との邂逅に端を発して語られる文明論といった趣きである。

長野まゆみ『少年アリス』の感想

夏の終わりの宵、友人の蜜蜂(人名である)が兄の色鉛筆を取りに学校へ行くというのに、主人公のアリスは付き合う。蜜蜂の飼い犬の丸耳を伴って2人が向かった夜の学校は幻想的な雰囲気を湛えており、そして雰囲気だけでなく、事実、幻想的な出来事に2人と1匹…

坪井栄『二十四の瞳』の感想

先生ものの草分けだが、思ったよりも学園生活について描かれている部分は少なかった。前半は先生の葛藤とか喜びとか、いかにもなのだが、中盤以降は概ね反戦小説である。

江國香織『つめたいよるに』の感想

どの話も、一定の「キレイキレイコード」のようなもので描かれている感じがする。そこが好みの別れるところだろうが私は面白く読んだ。

浅田次郎『薔薇盗人』の感想

表題の「薔薇盗人」は三島由紀夫の「午後の曳航 」へのオマージュとか。浅田氏における三島の影響はかなり大きいようだ。

安部龍太郎『血の日本史』の感想

断片的過ぎるので通史の勉強にはならないが、各時代の雰囲気を味わえるのは良い。

島田雅彦『僕は模造人間』の感想

ひねくれものの『仮面の告白』または『人間失格』(この小説の初読時、こっちは未読だったが)か。

田山花袋『布団・重右衛門の最後』の感想

『布団』は面白かった。姦通ものだがそれほど毒々しくもない気がする。『重右衛門』は忘れた。

三島由紀夫『仮面の告白』の感想

告白という私小説的な語りのくせに完全なる創作という騙し。今思えば漱石っぽい文体かもしれない。