何か読めば、何がしか生まれる

純文学からラノベまで、文芸メインの読書感想文です。おおむね自分用。

海外文学

ヘルマン・ヘッセ『デミアン』の感想

序盤こそ『郷愁』や「少年の日の思い出」を思わせるノスタルジックな成長物語と思われたが、それだけではなかった。謎めいたデミアンに代表される「カインのしるし」を持つ者による、それまでのヨーロッパやキリスト教や、“一般的に成功とされる人生というも…

アガサ・クリスティー『オリエント急行殺人事件』(光文社古典新訳文庫版)の感想

当時、書店でハヤカワ文庫版『オリエント急行殺人事件』が平積みされているのを目撃し、映画の公開間近を知った。そこから4月に出た古典新訳文庫を積読にしていたのを思い出し、ページを繰った次第である。

メーテルリンク原作/中村麻美 翻案・画『チルチルの青春』の感想

私は『うしおととら』『からくりサーカス』などを描いた藤田和日郎の漫画を、相当に愛好している。現在は『双亡亭壊すべし』を連載している藤田氏だが、その1つ前の連載、2008年から2014年にかけて描かれた『月光条例』は、全ての“物語”を巻き込んだ物語だっ…

ガルシン『ガルシン短編集』の感想

(2004年9月読了) 処女作の特異性から「鬼才」と呼ばれ、精神を病んで33歳で自殺を試み世を去ったフセーヴォロド・ミハイロヴィチ・ガルシンだが、20程度の作品を遺したと聞く。その全てを日本語で読めるというわけではなさそうだが、「鬼才」というのが気…

ドストエフスキー『地下室の手記』の感想

言で表せば、ひねくれものの独白といったところだろうか。前半は小説というよりも評論で、後半が物語という形式である。島田雅彦の『僕は模造人間』を思い出すような(むしろ順序としては本作が先であるが)、恣意と意に逆行して暴走してしまう人物の手記で…

フーケー『水妖記(ウンディーネ)』の感想

ある程度の年齢以下の方には、ウンディーネというとサブカル(ライトノベル)領域のファンタジー小説や、コンピューターRPG(近年では『パズドラ』に出ていたと思う)でお馴染みかもしれない(かく言う私がそうである)。この小説中でも一部触れられているが…

フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』の感想

初読時は“アンヌの有する完璧さに対する、若さゆえの反逆”というように読んだのだが、駆け足で再読してみるとかなり印象が違った。それは初読時の訳が新潮文庫の旧版に当たる朝吹登水子で、いま手元にあるのが新潮の新版である河野万里子の訳という差異だけ…

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー『貧しき人びと』の感想

何で知ったのか忘れてしまったのだが、ドストエフスキー→二葉亭四迷/北村透谷→埴谷雄高→安部公房という影響の系譜があるという。他にもドストエフスキーが近現代文学に与えた影響は甚大なようだし。ともかくその影響の発端を体験すべく読んでみる。

コナン・ドイル『緋色の研究』の感想

初のホームズ原作は、順当にその第1作にした。世に存在するシャーロック・ホームズに関するワトスン博士の回顧録全60篇は、ここから始まったことになる。シャーロッキアンへの道程もここから始めるのが妥当だろう。

アガサ・クリスティ『カーテン―ポアロ最後の事件』の感想

(2004年1月読了) 海外の小説にもそろそろ手を出そうと思いポアロものから行くことにする。父がかなりミステリ好きで、エラリー・クイーンやアガサ・クリスティのものは実家にもそこそこあって、この小説はそんな父が「ぜひ読め」と言ってきたものである。 …

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