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何か読めば、何がしか生まれる

純文学からラノベまで、文芸メインの読書感想文です。おおむね自分用。

三代目魚武 濱田成夫『駅の名前を全部言えるようなガキにだけは死んでもなりたくない』の感想


(2004年4月読了)

  現代詩の中でも特異なものを読んでみようと手に取る。100篇以上の詩が収録されている本である。
 作者の長い名前は、自身が兵庫の寿司屋の三代目として生まれたことによるという。“自分を讃える作品”をキーワードに制作しているということで、“オレ様”感あふれる詩が多い。頻出する語を挙げると、「君のスカートの中」「チャーミング」「チューイングガム」「自由」といったところか。
 そんな詩ばかりで、全体的にはそれほど素晴らしいとは思わなかったのだが、それでも幾篇かは心に残るものがあったので、それらについてだけ述べようと思う。

 「SOUL-II」。夢を持たなくなった「オマエ」への叱咤。「がんばる事も/がんばらない事も/別にどっちも/たいした事じゃない」として、ともかくでかい事を言えというのが突き抜けた感じがした。

 「情熱」。よく成功の条件として挙げられる「努力と根性」を否定し、情熱、知恵、勇気、愛といった心の動きこそが必要と説く、上の「SOUK-II」と通底した一篇。
 「阿呆の仕業」。「まあ阿呆の仕業なんで」と、ちょっと照れ隠しした感がある4行詩(形式的な意味ではなく単純に4行の詩)。ある意味では本書全体の注釈として機能しているように思う。
 「ともだち」。情けない「オマエ」だから友情を感じる、と友を励ます詩。「友情とは/友が情けないと書く」というのはちょっと違うんじゃないか、とは思うものの、捻くれた温かみが良いと思った。

 “自分を讃える作品”というコンセプトと、ある種傲慢さを感じさせるタイトルが多い作者だけに、もっと鼻持ちならない作品だと思っていたが、オレ様な感じはそれほど鼻につくこともなく、溢れる勢いがむしろ爽快な感じはした。落ち込んでいる時などには、まあ良いのではないかと思う。