中川与一『天の夕顔』の感想
確か東京駅の書店で、さも新刊のように平積みされていたのを買った。しかし、実際はそうとう昔の作品である。
帯に騙される
中川与一の名前を知っていれば、作者が昔の人だということは分かったはずである。なぜだか帯が掛けられており、それがあたかも気鋭の新人のような煽り方だったので、すっかり騙されてしまった。
清々しさ
とはいえ、移動の高速バスの中で引き込まれて読んだ。一人の女に命を捧げるという男の生き様は、ある意味ではうそ臭いものだが、それでも心動かされる。
カバーにも文体にも共通する、青い清清しさがあるように思う。手に持っていて嬉しい文庫本である。