何か読めば、何がしか生まれる

純文学からラノベまで、文芸メインの読書感想文です。おおむね自分用。

江國香織『つめたいよるに』の感想


(2003年5月読了)

 短編集である。以前少しだけ(「とくべつな早朝」だけ)読んだことがあるが、このたび全編読了した。
 ちなみにその「とくべつな早朝」は、大学時代に友人の家で酒を飲んだ折、ごろ寝をしながら読んだのだが、確かそれは友人が恋人に振られたとか、そういうくさくさした飲みだったので、読み終えて「なんだよちくしょう」みたいな気持ちを友人と共有することになったのを鮮烈に憶えている。
 それはもちろんただの八つ当たりであって、再読した「とくべつな早朝」は、とある特別な冬の夜のしっとりした感じと、清冽な朝の空気が感じ取れてよかった。

  それ以外にも合計20篇くらいの小品(掌編?)が収録されていて、色々と多彩なものが入っている。「桃子」「草之丞の話」といった初期の絵本作品もあるし、「ねぎを刻む」のような女性の怖い部分を見せられる話もあったりする。

 いつぞやのセンター試験で出題され、泣く受験生が出たとか何かと話題な「デューク」もそうだが、前者の童話に近い作品群は、さらりとしていながら「なんかいいな」と思わせられる。それと「ラプンツェルたち」はモチーフの使い方が巧い。

 どの話も、一定の「キレイキレイコード」のようなもので描かれている感じがする。そこが好みの別れるところだろうが私は面白く読んだ。一人旅なんかに持っていくといい感じかもしれない。 

つめたいよるに (新潮文庫)

つめたいよるに (新潮文庫)