以前、『川の深さは』について書いた時に少し触れたが、私は『うしおととら』『からくりサーカス』などを描いた藤田和日郎の漫画を、相当に愛好している。
現在は『双亡亭壊すべし』を連載している藤田氏だが、その1つ前の連載、2008年から2014年にかけて描かれた『月光条例』は、全ての“物語”を巻き込んだ物語だった。
同作の中でとりわけ重要な意味を持っているのが『竹取物語』と『青い鳥』なのだが、その『青い鳥』に続編があるということを、私はこの連載漫画の最終盤で初めて知ることとなった。思わず周囲の人にも聞いてみたのだが、やはりこの続編『チルチルの青春』――原題の直訳は『いいなづけ』だという――を知る人はいなかった。
そのため藤田氏の創作かとも思われたが(同作では、作中にしか存在しない物語が巧みな演出となっていたりもするので)、Amazonで検索してみると確かに実在していた。その後に知り合った方が、幸運なことに作中に登場したものと同じ本書を所蔵しておられ、この度これをお借りし、ついに読むことができたという次第である。
表紙に「翻案」とある通り、元は『青い鳥』と同じく戯曲だったものを、本書は小説として再構成してある。『青い鳥』の方は戯曲のまま翻訳され、文庫本になるほど普及しているのに、続編は現在この翻案本くらいしか読めないというのは残念な感じがするが、物語を知ることができるだけ有難いと言うべきだろうか。
英語版であれば、戯曲そのままがペーパーバックで読めるようである。それほど長い話でもないし、手にする機会があれば読んでみたい。
前置きが長くなったが、あらすじを示そう。
あらすじ
青い鳥を探す旅から7年後、16歳になったチルチルは、木こりの父を手伝いながら家族で暮らしていた。ある夜、彼のもとを再び妖精ベリリウンヌが訪れる。彼女はチルチルに、今度は“ほんとうの花嫁”を探す旅に出なければならないのだという。
サファイアの付いた帽子の力で、花嫁の候補となる少女たち――いとこで木こりの娘のミレット、もう1人のいとこで大人びた肉屋の娘ベリーヌ、活発でおちゃめな宿屋の娘ロッゼル、無口だが優しい粉屋の娘エイメット、哀しげな黒目がちな瞳をした物乞いの娘ジャリーヌ、たてロールのプラチナブロンドで薄紫の瞳をした市長の娘ロザレッル、長く白いベールを身に付けたチルチルが名前を思い出せない少女――を呼び寄せたチルチルは、彼女たちとともに、ベリリウンヌに導かれ旅立つ。
守銭奴の家、ベリリウンヌの宮殿での“光”との再会を経て、チルチルたちは先祖の国を訪れる。大先祖まで遡ってチルチルの花嫁を探そうとしてくれるが、確かなことはわからない。先祖たちの勧めで、彼らは次に子孫の国を訪れる。そしてついに子どもたちの母親、すなわちチルチルの花嫁が明らかになった。
チルチルは自分のベッドで目を覚ます。全ては夢だったかと思われたが、未来の花嫁は彼と同じ夢をみていた。2人の新しい1日が始まろうとしていた。