大江健三郎『死者の奢り・飼育』の感想
この頃から作家の処女作に執着するようになった。幾つかの話を入れた短編集だが、表題の「死者の奢り」が氏の処女作らしい(注;処女作は『奇妙な仕事』と後日判明)。
「死者の奢り」
その「死者の奢り」は暗い話だが、何故か死体洗い場が教会の中と感じられるような静謐さがある。
「飼育」
「飼育」は芥川賞受賞作。寒村で米軍捕虜を捕獲して、という話。黒人、というか人の肉の描写が独特。“箱庭”のようなものを持ち出すのが、この人の1つのパターンと言えそう。
「他人の足」
その“箱庭パターン”を踏襲した「他人の足」は脊椎カリエスの少年達の話だが、これが一番好きかもしれなかった。看護婦さんの“猥雑”さが、何とも。