東直己『消えた少年』の感想
先日の『バーにかかってきた電話』に引き続いて読了した。ススキノ探偵シリーズの第3作である。ちなみに前作については以下。
まずはあらすじを書いておこう。前作でもちょっと登場した中学教師の春子が再登場している。
あらすじ
「俺」は春子の教え子でもある少年、翔一と知り合いとなる。斜に構えた翔一だが、映画好きでもあり「俺」は意気投合する。しかし、仲良くなった矢先に翔一は失踪、しかも彼の親友は変態的に惨殺されているのが発見される。
春子から翔一探しを頼まれた「俺」は、普段は貸しを作らない筋者の桐原に翔一を探すよう依頼し、新聞記者の松尾や、大学院生で空手使いの高田といったいつもの面々にも協力を求める。要するに、なりふり構わず翔一を探し出す。いけ好かない刑事タネヤと衝突しながらも。
一方、春子と翔一の通う手稲星陵中学校と、その一帯の手稲南ヶ丘では、障害者福祉施設の建設に反対する動きが持ち上がっていた。教師の世界と、古くからの地主。新興住宅街に浮かび上がる真相とは――。
感想
といった感じで、前作に引き続いて面白く読んだ。特筆すべきなのは、今回は中学生たちが重要な登場人物であることだろうか。たぶん「俺」は、あまり幸福な中学生生活を送っていなかったと思うので、映画という共通項のある翔一はともかく、他の中学生の少年少女とどういう風にコミュニケーションをとるのかという辺りを興味深く読み進めた。
ちなみに手稲というのは、札幌市の北西を占める手稲区のことのようだ。恐らくは作中で示された手稲の地史というのは概ね本当のことなのだろう。
幕末の開拓団の話まで出てきた時にはどういうことになるかと思ったが、意外と分かりやすい結末だったと思う。
そして強烈なのはラストの肉弾戦である。「俺」も高田も荒事に関して無抵抗というわけではないが、その彼らをして苦戦させる相手の実力と、何より容貌の描写が恐ろしかった。犯行の動機やその背景あたりも含めて、なかなか共感し難い(=悪役として魅力的な)人物だったと思う。
最後に「俺」は女教師といい感じになるわけだが、次の本にも彼女は登場してくるのだろうか。その辺りも気にしつつ、次作も読みたいところである。