何か読めば、何がしか生まれる

純文学からラノベまで、文芸メインの読書感想文です。おおむね自分用。

過ぎた年(2023年)におくる31冊

2023年の終わりを迎えるにあたって捧げたい本のリスト。在野編集者の独断と偏見による。

ゆく年(2022年)におくる44冊

いつにもまして激動だった2022年に捧げたい本のリスト。在野編集者の独断と偏見による。

ゆく年(2021年)におくる30冊

2021年に捧げたい本のリストである。独断と偏見による。

森下典子『日日是好日』の感想

著者の実体験に取材したと思われる「お茶」――茶道と人生についての随想録である。その概要と感想を記す。

新潮文庫『Mystery Seller』の感想

8人の作家による短~中編ミステリ8本を集めたアンソロジーである。以下にそれぞれの作品の概要を示し、感想を述べる。

尾中香尚里『安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ』の感想

久しぶりに大きな選挙があることから、関連する本の一つも読んでみようと思い立って入手し読んだ。他にも政治や選挙を見越した新刊は多く出ているわけだが、特に本書を選んだのは、菅直人政権――民主党政権を再考する視点を備えたものだからである。

過ぎ去った年(2020年)におくる34冊

「今さら何を」 という感が強いが、 せっかく書き上げたので公開することとする。未曾有の状況の中、あわただしく過ぎ去っていった去年に捧げたい本のリストである。

筒井康隆『脱走と追跡のサンバ』の感想

題名の「脱走」という言葉からは、村上龍氏の『希望の国のエクソダス』を思い出す。が、社会システムとしての日本からの「脱出」を描いた『エクソダス』と、本作の「脱走」はいささか異なる。「狂騒」という言葉がふさわしいと感じる長編だった。

藤森照信『人類と建築の歴史』の感想

当時、とつぜん建築に関する仕事が入ってくることになり、付け焼刃でも建築について知る必要が生じた。その際に手に取った本の1冊である。 結果的に、あまり仕事の役に立ったとは言えなかったが、スケールの大きさと語り口の軽妙さも手伝ってか、読み通した…

大槻ケンヂ『サブカルで食う』の感想

筋肉少女帯で知られる大槻ケンヂ氏が、自身の経験を元にサブカル界でお金を稼ぎ食べていく方法について綴った本である。 著者の書きぶりには、優しさが滲む。教育的ですらある。そうした温厚さとロックが両立できるのが、大槻ケンヂという人の偉大さではない…

ひびき遊『ガールズ&パンツァー3』の感想

ライトノベル『ガールズ&パンツァー』の3巻の概要と感想。特にアニメ版との差異に着目してまとめています。

ひびき遊『ガールズ&パンツァー2』の感想

ライトノベル作品『ガールズ&パンツァー』の2巻についての概要と感想。 前巻に引き続き、大洗女子が戦車道の大会トーナメントを勝ち進んでいくのを物語の本線として、沙織を始めとする登場人物の心情が差し挟まれていく。2巻の主要な内容としては、大会第二…

ひびき遊『ガールズ&パンツァー1』の感想

『ガルパン』ライトノベル版は、概ねテレビアニメの物語に沿う形のノベライズで、全3巻である。まず今回は1巻について扱うこととして、概要と感想を記載する。

過ぎた年(2019年)におくる35冊

このリストは、2019年の間に私が、世の中の動きなどから気になった本、人に薦められた本、実際に読んで心に残った本などを挙げるものである。 多分に個人的事情を含むので、対象は今年出版された本に限られないし、文学賞やベストセラーなどでもスルーする場…

山田彩人『眼鏡屋は消えた』の感想

何となく手に取り、1本の長編ミステリだということで読む。端的に言ってしまうと、作品としては「可も不可もない」という印象。が、興味を惹かれる部分もあった。気になることは幾つもあったが、長編ミステリを読むという当初の目的は達せられ、その点は満足…

夢野久作『ドグラ・マグラ 下』の感想

非常に多くの要素、多くの文体(一人称・三人称・シナリオ風・古文・漢文・論文・新聞記事など)を含んでいて、それはそれだけ多くの解釈を許容するということを意味する。これは確かに巷で囁かれるとおり、再読するごとに違った読後感を得られるのかもしれ…

夢野久作『ドグラ・マグラ 上』(角川文庫)の感想

通常のミステリ(という表現も妙な気がするが)の埒外に位置し、ミステリというジャンル自体への批評性を備えたアンチ・ミステリで構成される“日本三大奇書”の1作である。角川文庫版の区分けに沿えば、上巻は概ね、作者による当時の精神科治療についての概説…

ゆく年(2018年)におくる63冊

今年も有象無象に忙殺されて読書は捗々しくなく、“昨年よりは少しまし”程度となりそうだ。それでも、ゆく年に送る本のリストを作ることは無益でないと信じて、今年もまた作りたいと思う。 このリストは、1年間、世の中の動向などから興味が広がり読もうと考…

ヘルマン・ヘッセ『デミアン』の感想

序盤こそ『郷愁』や「少年の日の思い出」を思わせるノスタルジックな成長物語と思われたが、それだけではなかった。謎めいたデミアンに代表される「カインのしるし」を持つ者による、それまでのヨーロッパやキリスト教や、“一般的に成功とされる人生というも…

会田誠『青春と変態』の感想

『氷菓』シリーズで青春の光と影を垣間見てきたが、それらがとても綺麗だった反動で、よりドラスティックな青春というものを読みたくなり、この小説に思い当たった。 …書き連ねたが、一言にまとめれば、冒頭の「よりドラスティックな青春を描いた小説を読み…

亀井秀雄 監修/蓼沼正美 著『超入門!現代文学理論講座』の感想

内容としては、4つの現代文学理論を解説し、ひいては「主人公の気持ちにピタッと寄り添」うことが規範とされている(本書p.8)らしい、学校における国語教育に一石を投じたもの、と要約できそうである。ここでいう「現代文学理論」とは、20世紀になって登場…

水谷彰良『サリエーリ モーツァルトに消された宮廷楽長』の感想

件のゲームだけでなく、映画『アマデウス』も観ていないので、それらでの印象は分からないのだが、本書を読んで浮かび上がってきたサリエーリのイメージは、基本的には穏やかで、真面目に職務に励む男、というものだった。

米澤穂信『いまさら翼といわれても』の感想

〈古典部〉シリーズの最新作に当たる短編集である。まだ文庫版も出ていないので、単行本(上製本)で読んだ。例により、まずは各編のあらすじを記すことから始めよう。

アガサ・クリスティー『オリエント急行殺人事件』(光文社古典新訳文庫版)の感想

当時、書店でハヤカワ文庫版『オリエント急行殺人事件』が平積みされているのを目撃し、映画の公開間近を知った。そこから4月に出た古典新訳文庫を積読にしていたのを思い出し、ページを繰った次第である。

米澤穂信『ふたりの距離の概算』の感想

前作は短編集だったが、今作は再び長編で、主観的には〈古典部シリーズ〉第2部といった趣がある。 いささかメランコリックな幕切れではあるが、あまり揚々としていても本シリーズらしくない。憂愁を内包して、彼らはどんな青春を送るのかを見続けたいと思う。

米澤穂信『遠まわりする雛』の感想

これまでの長編が、どちらかというと事件にピントを合わせていたのに対し、これらの短編は人物に合わせているという感じを受けた。「あとがき」によれば本書の主役は「時間」ということになるが、それは即ち、時間によって変容していく人物を描くということ…

米澤穂信『クドリャフカの順番』の感想

英文タイトルが語りかける通り、読者として神山高校文化祭を楽しめた、というのが一番シンプルな感想である。 ただ、奉太郎が語り手だったこれまでの2作とは異なり、古典部の4人が入れ替わり立ち替わり語り手となって物語が進行していくため、色々な味わい方…

米澤穂信『愚者のエンドロール』の感想

『古典部』シリーズ2作目である。前作『氷菓』(当該記事)の読了後、そのまま読み継ぐ。作中の時間軸的にも、発表順としても続篇と言ってよい作品である。 …ビデオ映画という劇中劇での殺人についての推理という構成は巧い。これならば、高校生の日常と非日…

米澤穂信『氷菓』の感想

既に書いてきた通り、ミステリは幾つか読んできたのだが、その殆どが殺人事件を扱うものだった。いつのまにかそれが当然のように思えており、いわゆる“日常の謎”を扱う類の作品は敬遠していたのが偽らざるところである。本作もそこに属すため、手が伸び難か…

対馬美千子『ハンナ・アーレント 世界との和解のこころみ』の感想

2016年、何かの展示企画で本書を見かけ、副題にある「世界との和解」という言葉に興味を惹かれ、読み始めた。 著者である対馬美千子氏とはお会いしたことがある。しかし、お互い主役でもない集まりで、少し言葉を交わしただけなので面識があるとは云い難い。…

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