いつもは読んだ本の感想を書いているのだが、広い意味で「その年」を概観する本のリストを作りたいと思い立った。この考えは、実のところ年末には生じていたのだが、主に多忙さによって、これまで叶わなかった。
仕方がないので、手が空いた年度末のこのタイミングに作成する。2016年の1年間、世の中の動向などから興味が広がり読もうと考えた本や、人に薦められた本、実際に読んで心に残った本などから成る50冊である。おすすめ本リストというよりは、個人的な、これから読みたい本・手元に置きたい本の列挙と言うべきだろう。
ただ、脈絡なく列挙するのではなく、幾つか定めた大枠ごとに挙げていきたい。では始めよう。
ある節目
毎年、なにかしら「〇周年」という節目はある。2016年は、どういったものがあっただろうか。
まず、夏目漱石の没後100年を数えた年だった。『夏目漱石の妻』などNHKのドラマも、それを踏まえたものだったのだろう。
漱石の主要な作品は全て読んでいるが、再読するならば『こころ』だろうか。初めて読んだのは学生の頃で、それから断片的にしか再読はしていない。
漱石にはロンドンに留学した経歴があるが、そのイギリスでピーターラビットが有名になるのは、彼が帰国してしばらく経ってからのことだったようである。漱石と同時代人と言っていい、この一連の絵本の作者ビアトリクス・ポターは、2016年に生誕150年を迎えた。
欧風趣味の母が買いそろえていたので、実家でピーターラビットの本を読んだことはある。それから随分と時が経ったが、いま読んだらどんな感想を抱くだろうか。
- 作者: ビアトリクス・ポター,Beatrix Potter,いしいももこ
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2002/10/01
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がらりと趣が変わるが、2016年は東日本大震災から5年を迎えたとともに、チェルノブイリ原発事故から30年という節目でもあった。最近はあまり注目されなくなったが、食品の放射線量が現状どうなっているのかは今いちど確認したい。東京都小金井市の取り組みは、貴重な資料となるだろう。
資料集 市民と自治体による放射能測定と学校給食――チェルノブイリ30年とフクシマ5年の小金井市民の記録
- 作者: 大森直樹,東京学芸大学教育実践研究支援センター
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2016/07/30
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トランプ大統領については後ほど別個に挙げるが、アメリカ合衆国の建国も240年という節目であった(10年刻みで言いだすとキリがないが)。アメリカの民主制を説明する古典が以下に挙げるトクヴィルの著作である。
かなり分量のある本であり、岩波文庫版だと全4冊に及ぶが、じっくりと読んでみたい誘惑にかられる。中央公論新社からは抄訳版として『アメリカにおけるデモクラシーについて』も出ているので、中身を見て考えたい。
かつてアメリカ合衆国と二極化の時代を作ったソヴィエト連邦だが、2016年は、その崩壊から四半世紀が過ぎた年でもあった。
そのタイミングを受けてかどうかは分からないが、ソ連最後の指導者ゴルバチョフ氏に、ロシア文学者として知られる亀山氏がインタビューしにいくという本が6月に出ている。インタビューはあまり首尾よくいかなかったようだが、それにしても一読したい1冊である。
2016年は、劇場版アニメが好調だった。その辺りからも拾ってみようと思う。
筆頭は、新海誠監督の『君の名は。』としたい。監督自ら執筆した小説版については、既に読んで感想を記した(当該記事)。
『君の名は。』と、(適当な本が無いので入れていないが)『シン・ゴジラ』と、2016年の邦画3枚看板だったのが『この世界の片隅に』であろう。
原作は漫画3巻(新装版は2巻)である。呉の遊郭でのエピソードなど、映画ではやや端折られた部分も確認できるので、原作も1度は読みたいところである。
この世界の片隅に コミック 全3巻完結セット (アクションコミックス)
- 作者: こうの史代
- 出版社/メーカー: 双葉社
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実写映画では、ネフローゼ症候群を患いながらも闘ったプロ棋士の村山聖を描いた『聖の青春』も良かった。ノンフィクション小説として書かれた原作は、ところどころ映画とは違うのだが、いずれにせよ熱いものを感じる作品である。
日本での封切は年明け後となったが、遠藤周作の原作を マーティン・スコセッシ監督によって映画化した『沈黙 -サイレンス-』も気になった。有名な作品だが、私は未読である。これは2017年中に読みたいと思う。
映画から離れて、文芸賞の受賞作からも拾ってみたい。
三島由紀夫賞の発表時、著者が不機嫌な様子で会見して話題になったが、22年ぶりとなった小説の内容はどのようなものか、興味がある。
芥川賞からは、『死んでいない者』を挙げたい。通夜に集まった親族の話とのことだが、「死んで、いない者」なのか「死んでいない、者」なのか、その辺りの攪乱が狙いかと妄想する。
世を去った方々を偲ぶ意味で、読みたい本を挙げよう。
太宰治の娘としても知られる津島佑子氏が2月に亡くなった。氏の小説を未読のまま見送ることになってしまったので、遅きに失した感はあるが、これから読みたいと思う。
『火の山―山猿記』は、かつて放映されたNHKの朝の連続テレビ小説『純情きらり』の原案として知られる小説である。しかし、ドラマの軽妙な雰囲気とこの小説が、どうしても頭の中で繋がらない。実際に読んで確かめたい。
ウンベルト・エーコ氏も未読のまま、2月に亡くなってしまった。
氏と言えば『薔薇の名前』であろう。他の作品は文庫化されているものもあるのに、この作品だけは何故か頑なに文庫化されない。いずれ腰を据えてハードカバー上下巻に取り組みたいものだ。
『頭の体操』という、論理トレーニングのような頓智のような謎々のような設問集とでもいえそうな本がある。現在の知名度は、どれくらいだろうか。
父はこの類が好きで、シリーズを何冊も買い求め、子どもだった私も親しんだ。私は周囲の意表を突くのが好きだが、この本の影響だと思う。著者の多湖氏の本職は心理学だったことを、3月に死去された折に知った。
仕事で知りあった方におすすめの漫画を訊ねると、『ワイルド7』という答えが返ってきた。50巻に近い、ちょっと読むにはためらわれる分量に物怖じしているうち、4月に望月氏が亡くなった。
銃とバイクと、裁判なしで悪党を射殺できる資格を有するというアウトロー警察官のグループという設定は、現在の漫画でも通用しそうである。どこかでまとめて読めるとよいのだが。
5月には、43歳という若さでライトノベル作家の松智洋氏が亡くなった。氏の作品には触れてこなかったのだが、漫画化・映像化もされて人気だったことは知っている。代表作は下記だろうか。全12巻とのことだが、最初の方だけでも読んでみたい。
迷い猫オーバーラン!―拾ってなんていってないんだからね!! (集英社スーパーダッシュ文庫)
- 作者: 松智洋,ぺこ
- 出版社/メーカー: 集英社
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同じく、蜷川演出として知られる蜷川幸雄氏による作品にも、あまり接したことがない。5月に世を去れらた後となっては、その演劇を観ることは困難だろう。
著書なら、その点の支障は少ないと思われる。演劇作品も録画などで観たいところではあるが…。
同じく5月、声優の水谷優子氏も世を去った。『ちびまる子ちゃん』の「お姉ちゃん」こと、さくらさきこ役を始めとして広く親しまれていた氏は、コバルト文庫で3作の小説を発表している。
どんな作品か、詳細は知らないのだが、題名からして自らの経験に取材する部分が大きいと思われる。どこかで見かけたら手に取ってみたい。
書名と作者は「ムハマッド」となっているが、これはモハメド・アリのことである。漠然と“ボクシングの強いチャンピオン”という意識しか持たなかったが、6月に亡くなった折に調べてみると、人種的・政治的にも困難と闘っていた人物だと知った。
自伝というのは、しばしば誇張が出てしまう部分がある。しかし、その不都合を差し引くとしてもやはり自伝から手を付けるのが良いと私は思う。
ムハマッド・アリ 上―わが魂の戦歴 (ハヤカワ文庫 NF 107)
- 作者: ムハマッド・アリ,村上博基
- 出版社/メーカー: 早川書房
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7月には、永六輔氏と大橋巨泉氏の2人が相次いで亡くなった。
そもそも、あまり芸能人に興味がなかったので、名前と顔を知っている程度だったのだが、もともと永氏は放送作家という仕事をしていて興味が湧いた。
著書としてはベストセラーになった『大往生』など多数あるが、挙げるのは昨年出版された旧知の写真家との対談集である。
私にとって巨泉氏と言えば『クイズダービー』で、最近はテレビで見かけることもなくなっていた。ジャズに傾倒して大学を中退し、徐々に芸能界に入り、56歳でセミリタイアを宣言した氏。著書ではその56歳までの人生を振り返っている。それ以降も知りたい気がするが、まずはこちらを一読してみようと思う。
女性で世界初のエベレスト登頂、7大陸最高峰登頂を果たした田部井淳子氏も、10月に世を去った。以下は氏の最初の著書の文庫版である。
登るとしても1,000メートル足らずの山ばかり(そもそも最近はぜんぜん登っていない)の私にとって、文字通り雲の上の人ではあるが、どういう気持ちで登っていったのか、読んで知りたいと思う。
ヤマケイ文庫 タベイさん、頂上だよ 田部井淳子の山登り半生記
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同じく10月、三笠宮崇仁親王も100歳で薨去された。特別扱いを嫌い、戦前は士官生活を楽しみ、戦後は紀元節の復活に反対するなど興味深い宮様だったが、オリエント史の研究者としても有名だった。
専門書かと躊躇するが、評判を見ると比較的とっつきやすいとのこと。宮様の本という興味から離れても興味深い。
災禍の記憶から
東京で暮らしていると2011年ほどには肌で感じることはなかったが、2016年もまた災害の年だったと思う。
4月14日の熊本地震、10月21日の鳥取県中部地震と、2016年の日本は2つの大きな地震にみまわれた。とりわけ熊本地震の被害は大きく、たまたま地震後2か月ほどで仕事で現地に行った私にも、その爪痕が見て取れた。
その一部始終を、現地の新聞社による写真集は克明に伝えていると思う。
平成28年熊本地震 特別報道写真集 -発生から2週間の記録-
- 作者: 熊本日日新聞社,熊本日日新聞=
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熊本地震でも直接間接あわせて204名の死者が出たが、東日本大震災で失われた命も多かった。その死者をめぐる生者(遺族)たちの言葉にフォーカスした本が昨年出版されている。
「霊性」とあるが、オカルティズムではなく、大学の教師である著者のゼミで、学生たちが行った現地の人々へのフィールドワークの結果、書かれた論文を1冊の本にするとき、この題名とせざるを得なかったのだろうと思う。これは優先して読みたい。
地震の他、12月22日に新潟県の糸魚川市で大規模火災があったことも忘れ難い。木造建造物の密集地だったこと、消防力が不足していたことなど、鎮火に時間がかかった理由として色々な課題があるが、幸い死者が出なかったのは防火意識が高かったためではないかと思う。
以下の本は消防隊員や消防団員が対象ではあるが、どういう方針なのか、一般人が読んで理解しておくことは損にはならないと思う。もちろん、生兵法で大怪我をしないための弁えも、併せ持つ必要はあるだろう。
消火戦術ガイドブック (イカロス・ムック Jレスキュー消防テキストシリーズ)
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世の中が動いていく以上、問題は避けられないのだが、それにしても解決の糸口が見えないことが多いように思う。
東京オリンピックまで、2017年から数えると3年と少しとなった。私見としては、1度やっているので他の都市でやればいいのにと思うのだが、そう思う一因として、どうも都市振興のために行いたいように見える点がある。それはそれで悪くないのだが、2016年の動向をみていると、それに加えて不手際が多いようで何をやっているのか、と思ってしまう。
とはいえ、オリンピック開催の裏方仕事については、べつだん詳しいわけでもない。2020年までにより深く知りたいと思う。手始めには新書あたりがよかろうと、以下の本を挙げておこう。
オリンピックと同時開催されるパラリンピックについては、輪をかけて知らない。昨夏こんな1冊が出ているので、併せて読みたいところである。
2017年になっても引き続き報道されているものに、築地から豊洲への市場移転をめぐる問題がある。
今年になって3か月が経過し、既に事情が変わっている可能性もあるが、2016年時点の出版物として以下を挙げる。ただし、二転三転している状況を鑑みると、読んでそのまま鵜呑みにするべきではないだろう。いずれにせよ、まずは一読、といったところだろうか。
2016年9月、前年12月に過労が原因で自殺した電通の女性社員の過労死が認定され、その後の11月に厚生労働省の強制捜査が入るなど、年の後半は過労死について再び耳目が集まった。
それが政府の働き方改革に繋がったのだと思うが、遅きに失した感は強い。以下の本はkindle版の発売こそ2015年だが、紙媒体としては既に10年前に出たものである。途中まで読んで積んでしまっていたが、この10年で何が改善され何がそのままか(当時の内容そのままでkindle版が出ているのであれば、後者の方が多いのは明らかだが)を把握するために読もうと思う。
上からの働き方改革も結構だが、やはり働く側も自衛しなければならないだろう。私のように個人で仕事をするのであれば尚更である。
以下は過労以前の疲労を貯めないための方策を記した本で、読んで概要と感想を記した(当該記事)。イミダペプチドや休養に“ゆらぎ”を導入するのは、今のところ私にはそこそこ有効であるように思う。
もう1つ、2016年で憶えておきたい事項としてパナマ文書にまつわるスクープがある。とはいえ、私にはパナマ文書が“租税回避行為に関する機密文書”だという大づかみな理解しかない。
パナマ文書公開にまつわるドキュメンタリーなども出ているようだが、どんな意義があるのかを論じたものの方が私には興味深い。以下の本は問題の表出から時を置かず出た本だが、網羅的であるとされている。一度手に取りたい。
事件とは別に、多くの人の話題となった出来事からも何冊か挙げられると思う。
10月初め、ノーベル文学賞受賞者としてボブ・ディラン氏が発表されたのは、その後の氏の対応も含め、やはりセンセーショナルだった。
と言いつつも、やはり私は氏について有名な曲以上のことは知らない。氏の自伝は既に何年か前に翻訳されていたようだが、この機会にクローズアップされた。一読するのも良さそうである。
ノーベル賞と言えば、このところ毎度のように引き合いに出されるのが村上春樹氏である。
ずばり「文学賞について」という章を含んだ本が9月に文庫化された。こちらは既に確保済みなので、そのうち読むだろう。
アメリカ合衆国の大統領選と、その結果としてのトランプ大統領の誕生も、やはり2016年の出来事として留めておくべきだろう。
そもそも、現在の大統領とはどんなものなのか。大掴みに出来そうな本が出ている。
アメリカ大統領制の現在 権限の弱さをどう乗り越えるか NHKブックス
- 作者: 待鳥聡史
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さらに、トランプ氏自身については自伝がある。大統領選挙に出る前の、実業家としての自身にフォーカスしたものだが、逆にその方が氏の実態に沿ったものと言えるようにも思える。
- 作者: ドナルド・J.トランプ,トニーシュウォーツ,Donald J. Trump,Tony Schwartz,相原真理子
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大統領選挙終盤、ヒラリー・クリントン氏と予想外に競り合うトランプ氏を見て一部で聞こえたのが、「反知性主義」という言葉だった。この文脈では、あまり良い意味で用いられたのではないが、もともとはこの言葉は、別のニュアンスを含んでいた、という辺りを説明しているのが以下の本である。
厳密に言うと、ある意味では、トランプ氏を支持する動きと地続きのようにも私は思うが、ともあれ一読してみたいところである。
一方、日本では、7月の東京都知事選挙により、小池百合子氏が都知事となった。東京で暮らしていると、既に述べたオリンピックや豊洲問題などで、氏についての報道を聞かない日は無い程なのだが、そんな知事の座右の書として再注目されたのが、戦中の日本軍の失敗を論じた『失敗の本質』だった。
主に工学の領域で畑村洋太郎氏が「失敗学」を打ち出したのは2000年代に入ってからだが、その15年ほど前に組織論的な失敗を論じた本があったということは、小池氏のおかげで初めて知った。これも早めに読みたい1冊である。
- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08
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天皇陛下が生前退位のご意向を示された、との報が、2016年後半は波紋を呼んだ。別にご意向通りにすればいいのに、と私は思うのだが、そう単純なものでもないのかもしれない。
女系天皇についても含め、皇室典範について紐解く本として、以下を挙げておこう。
天皇の生前退位により生じた「平成が30年で終わるかもしれない」という予見に、SMAPの結成から解散までを重ね合わせたのが以下の本である。昭和のように、平成もまた一時代として語られる時が来るのかもしれない。
残り10冊は、特に世の中の動きとは関係なく、単純に自分が読んだり入手したり、近く読みたいと思っている本からセレクトしたい。
既に読み、感想も書いた(当該記事)本だが、みうらじゅん氏が自らの“仕事の作り方”を教えた本は、特に私のようなフリーの人間には学ぶところが大きいと思う。今後も参考にしていきたいという意味で、手元に置きたい本である。
ハンナ・アーレントの著作に触れたことはあまりないのだが、9月に催された東京国際ブックフェアでたまたま手に取り、気になった1冊である。「世界との和解」とは、いささかライトノベルめいた感じも抱かれる言葉使いだが、言わんとしていることは分かる気がする。
目下、少しずつ読み進めている。読み終えたら感想を書きたい。2018年夏ようやく読み終えて書いた(当該記事)。
英語には「お湯」に相当する言葉がない、という類のことはよく言われることだが、それを突き詰めて調べようとは思っていなかった。以下の本は、様々な言語に固有の言葉をイラスト付きで教えてくれる。さらりと読めるが、なかなか興味深い本である。
がらりと変わって、1970年代に発表された小説である。作者はこの作品で第64回直木賞を受けている。
もともと海軍で爆撃機に乗っていただけに、戦記関係で多数の著書のある作者だが、本書では自身の戦争体験を挿入しつつも私小説的な物語を展開させている。
戦争に関する本では、年配の知人から勧められたこちらも気になっている。中公新書ナンバー3が示す通り、50年ほど前の本である。
当時のイギリス軍人によって日本人がいかに人扱いされなかったか、をユーモラスに描くという離れ業をやってのけた、という。その一言が真実か否かを確かめるだけでも読む必要があろうと思う。
アーロン収容所―西欧ヒューマニズムの限界 (中公新書 (3))
- 作者: 会田雄次
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また毛色が違うが、若くして自死した作家・佐藤泰志氏の初期作品集を挙げる。氏の人生を追ったドキュメンタリー映画『書くことの重さ』を観て知った作家である。
本書には作者の高校生時の作である「市街戦のジャズメン」が収められている。映画化されたものなど他にも代表作はあるが、まずはやはり、初期作品から読んでみたい。
『書くことの重さ』を観る限り、佐藤氏の自死の理由として、芥川賞の選に漏れ続けたことを挙げるのは的外れでないように思う。そんな風に選外の憂き目を見たのは、もちろん佐藤氏の作品だけではなかっただろう。
その辺りを紹介してくれるのが以下の本である。残念ながら本文中で佐藤氏の作品への言及はないが、巻末の「芥川賞一覧」では、佐藤氏の「きみの鳥はうたえる」が「著者が選ぶ「芥川賞を取らなかった名作」」とされているのを確認できる。
続いては須賀敦子氏によるタブッキの作品である。数年前に神奈川近代文学館まで須賀敦子氏の企画展を見に行った折、物販コーナーで入手してそのまま積読になっている。そろそろ読みたい1冊である。
- 作者: アントニオタブッキ,Antonio Tabucchi,須賀敦子
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同じく数年前に入手した、数学者・岡潔氏の随筆集である。題材は数学ではなく、むしろ科学全般、仏教を中心とした宗教、そして日本であろうか。
なかなか表現が難しい部分があるが、分厚いわけでもないので読み通したい。
最後は「三大奇書」の一角である。既に『虚無への供物』『ドグラ・マグラ』 は読んでおり、残すところは本書のみ。まとまった時間を用意して今年こそ読みたい。
以上50冊である。厳密に言えば複数巻の本もあるのでプラスαはあるが、そこはお目こぼし頂きたい。
思ったよりも物語が少なく、また時事問題に偏った気がするが、これが現在の自分の興味関心の割合なのだろう。
ともあれ、ここに挙げた本を気にしつつ、適宜、優先順位を入れ替えて読むというのが、今年の読書になるかと思う。毎年冬になると仕事が立て込んで読書が中断してしまうのだが、どうにかできればと思う。ついでに、今度の「2017年におくる〇冊」については、ぜひ今年の12月末に更新したいものである。