何か読めば、何がしか生まれる

純文学からラノベまで、文芸メインの読書感想文です。おおむね自分用。

小説

荻原浩『なかよし小鳩組』の感想

当時、日曜の朝にふと読み出し、そのまま半日ばかり読み続けて読了してしまった。へっぽこ広告会社の面々が登場する『オロロ畑でつかまえて』(当該記事)の続編である。まずはあらすじから。

川端康成『伊豆の踊子』(集英社文庫版)の感想

(2004年9月読了) デビュー作「招魂祭一景」所収。「踊子」は学生時代に新潮文庫版で一度読んだのだが、処女作や新潮版に入っていない他の作品(逆に「抒情歌」「禽獣」は新潮版のみ)を未読だったので再読かたがた手に取った。こちらの収録作品は前掲2編と…

若合春侑『腦病院へまゐります。』の感想

(2004年9月読了) 煽り文句に曰く“究極の情痴文学”と言われた表題の処女作と、もう一編「カタカナ三十九字の遺書」を収める。以下まずは各篇あらすじ。

山本周五郎『花杖記』の感想

(2004年9月読了) 文壇デビュー作「須磨寺付近」所収の初期短編集である。これに加え表題作と、他に「武道無門」「良人の鎧」「御馬印拝借」「小指」「備前名弓伝」「似而非物語」「逃亡記」「肌匂う」を収めている。 とりあえず各篇のあらすじから。

伊集院静『三年坂』の感想

どの作品も、人生というものの残酷さとか煩雑さといったものに、立ち向かおうという意図を持たず、しかし立ち向かう人間の強さが滲み出ているように感じた。亡妻である夏目雅子や付き合いのあった色川武大のことに触れたあとがきを読み、この作者を少し好き…

阿部和重『アメリカの夜』の感想

(2004年8月読了) 阿部和重の名を、学生時代にとある教師から教えられた。その教師には別段共感するわけでもなかったが、常日頃は批判的なその教師があまり褒めるので、どんな作家かと思いデビュー作を読んでみることにした。以下、まずはあらすじ。 分裂し…

藤原智美『運転士』の感想

潔癖症の零落譚二編といったところだろうか。どちらの作品も、“人工的で清潔できっちりとしたもの”に惹かれる主人公が、何らかのきっかけによって自ら秩序を崩していく様子が描かれている。ただ、両者の色彩は微妙に異なっていると思う。

福井晴敏『川の深さは』の感想

恐らく多くの読者が指摘するところだと思うが、確かに映像的な作品である。それも終盤のスペクタクルな感じを活かすためには東宝あたりで映画化されるとよさそう…などと書いていたら、同じ作者の『終戦のローレライ』を原作とした映画『ローレライ』は東宝で…

滝本竜彦『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』の感想

世界の不条理の具現体と戦うことで、自らに意味を見出す2人の物語、という感じだろうか。文体や設定はかなりライトノベル寄りで、適度に頭の悪い陽介視点による描かれ方はなかなか面白い。親和性が高いのだろう、映画化、漫画化もされている。

三島由紀夫『花ざかりの森・憂国』の感想

純文学的なものからコミカルなものまで多彩な顔ぶれだが、なんといっても「憂国」のインパクトが凄かった。初読時、朝の電車の中で読んでいたのだが、自害のシーンに思わず吐き気を催して途中駅で降りて休むことになってしまった。これを書くために再読した…

島田荘司『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』の感想

トリックは割と単純で、ある程度ミステリを読みなれた読者がよく考えながら読めば、何となく犯人像の想定はできるかと思う。『十角館の殺人』(当該記事)の衝撃が大きかったので、それを思うと小粒という感想は否めなかった。これ自体をオリジナルであるコ…

松村栄子『僕はかぐや姫』の感想

17歳から18歳にかけての女子高生が何を考えて生きているのか、がまずまず描かれているように感じた。“性以前”から少しだけ女性となった自分へ、という変転を描くのに、18歳を間近に控えた裕生を主人公としたところが心憎い。文庫版の表紙が恐らく彼女の肖像…

島田雅彦『彼岸先生』の感想

(2004年7月読了) 私の読書の羅針盤の1つとして、ときどき参照する福田和也『作家の値うち』での評が気になり読み始めた。以下、まずはあらすじ。 大学生の「ぼく」(菊人)は、ロシア語を専攻している。恋人の砂糖子はイタリア語学科で、その暗さと明るさ…

ドストエフスキー『地下室の手記』の感想

言で表せば、ひねくれものの独白といったところだろうか。前半は小説というよりも評論で、後半が物語という形式である。島田雅彦の『僕は模造人間』を思い出すような(むしろ順序としては本作が先であるが)、恣意と意に逆行して暴走してしまう人物の手記で…

村山由佳『天使の卵 エンジェルス・エッグ』の感想

身も蓋もないことを書いてしまうが、「避妊くらいしろ」というのが読了後ほどなく到来した最初の感想だった。無粋きわまりないかもしれないが、現代の日本を舞台にしていて、しかも春妃が医師である以上、この点は物語への没入を阻害しているように思えてな…

筒井康隆『にぎやかな未来』の感想

デビュー作「お助け」を所収した短編集。短編集というよりはショート・ショート集といってよさそうな本で、全40篇超を収めている。後の自分のためにざっとタイトルのみ挙げておこう。

フーケー『水妖記(ウンディーネ)』の感想

ある程度の年齢以下の方には、ウンディーネというとサブカル(ライトノベル)領域のファンタジー小説や、コンピューターRPG(近年では『パズドラ』に出ていたと思う)でお馴染みかもしれない(かく言う私がそうである)。この小説中でも一部触れられているが…

奥泉光『ノヴァーリスの引用』の感想

(2004年4月読了) ドイツロマン派に彩られた氏の出世作。処女作はこれ以前にあるらしい。2004年当時は作家の処女作にこだわっていたので、こういう場合には困った。「処女作に全てが宿る」と言われるし、様々な作家の処女作を集めた文庫とか全集などはない…

二葉亭四迷『浮雲』の感想

どうしても文三に感情移入して読んだ。如才ない昇や、何だかんだいって稼ぎが大事とするお政などの人物にも共感しないではないが、やはり作者が主人公として配置した文三への共感ほどではなかった。

椎名誠『ジョン万作の逃亡』の感想

幻想的でアヴァンギャルドなもの、私小説風なものと系統が違うものが同居していて不思議な印象の本になっている。しかし、どうも夫婦の間のすれ違い的なテーマが執筆当時の作者の胸中にはあったようで、5作中2作はそういう作品になっている。

フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』の感想

初読時は“アンヌの有する完璧さに対する、若さゆえの反逆”というように読んだのだが、駆け足で再読してみるとかなり印象が違った。それは初読時の訳が新潮文庫の旧版に当たる朝吹登水子で、いま手元にあるのが新潮の新版である河野万里子の訳という差異だけ…

恩田陸『六番目の小夜子』の感想

学校を舞台にした都市伝説&民俗学テイストな青春群像、というのが端的なまとめだろうか。どの登場人物もそれなりの味があり、作者の当初のイメージ通り、確かにNHKの少年少女向けドラマにはもってこいの原作と言えるだろう。

フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー『貧しき人びと』の感想

何で知ったのか忘れてしまったのだが、ドストエフスキー→二葉亭四迷/北村透谷→埴谷雄高→安部公房という影響の系譜があるという。他にもドストエフスキーが近現代文学に与えた影響は甚大なようだし。ともかくその影響の発端を体験すべく読んでみる。

荻原浩『オロロ畑でつかまえて』の感想

マイナーかもしれないが面白かった。サクサク読めるユーモア小説という感じで、爆笑した場面も2つ3つあり。『吉里吉里人』を書いた井上ひさしが激賞するのも分かる東北弁の軽妙さ、というところだろうか。

コナン・ドイル『緋色の研究』の感想

初のホームズ原作は、順当にその第1作にした。世に存在するシャーロック・ホームズに関するワトスン博士の回顧録全60篇は、ここから始まったことになる。シャーロッキアンへの道程もここから始めるのが妥当だろう。

伊集院静『乳房』の感想

(2004年2月読了) 直木賞受賞作の表題作を含む短編集。他に収録作は「くらげ」「残塁」「桃の宵橋」「クレープ」。まずはそれぞれあらすじを。 「くらげ」。大学時代の友人である佐藤幸之助の妹、公子に会いに、「私」(是水)は静岡にある公子の店を訪れる…

斉藤栄『星の上の殺人』の感想

表題作が氏のデビュー作であるという。他の作品もそこそこに面白いのだが、いかんせん時代の流れでいささか陳腐になっている中、この表題作はちょっと印象的である。解説にもあったが、能舞台にも通じるような極限の箱庭化と抽象化がなされている。

太宰治『晩年』の感想

処女作。綿矢りさの影響(2003年下期の芥川賞受賞者で太宰を愛読していたとか)も少しあって読んでみることに。短編集で内容は様々である。全15編も収録されているが、なるべく簡単に概要を書いてみる。

村上春樹『羊をめぐる冒険 下』の感想

(2004年1月読了) 昨日に引き続き下巻である。まずはあらすじを。 札幌に着いた「僕」とガール・フレンド。ガール・フレンドの希望でドルフィンホテル――いるかホテルに落ち着いた2人は、「羊」を探すべく行動を開始する。が、成果ははかばかしくない。図書…

村上春樹『羊をめぐる冒険 上』の感想

(2004年1月読了) 『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』に続く三部作のラストとして書かれた小説である。文庫版の上下巻で読んだ。ただ、これが完結編というわけではなく、この後の『ダンス・ダンス・ダンス』で完結とされている。商業作家となった作者…