何か読めば、何がしか生まれる

純文学からラノベまで、文芸メインの読書感想文です。おおむね自分用。

小説

村上春樹『1973年のピンボール』の感想

漱石読みを一休みして、現在に近い小説が読みたくなったので。村上春樹の2作目である。前作『風の歌を聴け』の直接の続編といっていい内容だ。

夏目漱石『明暗』の感想

『吾輩は猫である』を超える分量(約600ページ)は、漱石の作品中で最長だろう。初期に比べると文章はさらに洗練され、会話文が多いためもあって分量にそぐわぬ速さで読み終えた。

夏目漱石『倫敦塔・幻影の盾』の感想

漱石の初期短編を7つ収録したものである。元々は『漾虚集(ようきょしゅう)』という名でまとめられた由。

夏目漱石『草枕』の感想

『吾輩は猫である』(当該記事)の直後に執筆されたとされている小説である。しかし、毛色はかなり異なっている。『猫』は文明論、こちらは芸術論という違いはあれど、それらの評論を漱石の和・漢・洋の知識をフル活用して本筋そっちのけで展開している点は…

夏目漱石『我輩は猫である』の感想

文庫で500ページにも及ぶ大部だが、これが面白い。博学な猫の語り口はかなり難しい部分もあるが、それでも読みやすいし、猫が語るということそれ自体が一つの滑稽になっている。

灰谷健次郎『兎の眼』の感想

灰谷健次郎が教師生活を経て書いた最初の小説。大阪の工業地帯、塵芥処理場の側にある小学校と、そこで学ぶ子ども達、教師、そして住民たちの話である。

長野まゆみ『夏至南風』の感想

ミステリ小説のような要約になってしまったが、これはミステリではない。 それにしても、これまで私の読んだ長野作品とはやや違う趣きである。それは、夏至南風(カーチーベイ)という沖縄言葉を用いたタイトルや、華南(中国南部)あたりをイメージした街や…

村上龍『希望の国のエクソダス』の感想

一読、膨大な取材によるものであることは分かる。政治・経済からIT技術の細部まで行き渡った描写は、もちろん創作は入っているだろうけれど読み応えがある。

川端康成『雪国』の感想

言わずと知れた小説である。川端のノーベル文学賞受賞の審査対象となった。 舞踊研究の真似事をしつつ、実態は妻子持ちながら親の財産で暮らしている島村は、旅先の越後湯沢で駒子という娘と出会う。

田中康夫『なんとなく、クリスタル』の感想

長野県知事(2003年当時)のデビュー作という意識で読んだ。1980年6月。東京で、女子大生をしながらファッションモデルもしている由利は、同じように大学生でキーボード奏者として注目され始めている淳一と共に暮らしている。しかし、淳一はコンサートの遠征…

池田満寿夫『エーゲ海に捧ぐ』の感想

「エーゲ海に捧ぐ」。妻のトキコと離れてサンフランシスコのスタジオで仕事をしている彫刻家の「私」。愛人のアニタ、その友人のグロリアがいるところへ、新宿の妻から国際電話がかかってくる。側に女がいるだろう、いない、の押し問答。

花村萬月『ゴッド・ブレイス物語』の感想

処女作である表題作と、もう一本「タチカワベース・ドラッグスター」という短編を収める。文庫で読んだのだが、ハードカバー版の表紙がとても良いと思ったので上の画像はそちらのものである。

宮本輝『螢川・泥の河』の感想

「泥の河」は死と生の凄絶さと美しさを描いている。…ん?「螢川」も同じか。ただし舞台が前者は夏、後者は冬(最終的には初夏だけど)なので、作品のイメージはやや違う。

池澤夏樹『南の島のティオ』の感想

シリアスな文明論だった処女作『夏の朝の成層圏 』と対を成すような、ほんわかとした南の島の自然と精霊と、戦争の記憶という感じだろうか。話に出てくる人はほとんどが呑気者である。

梶井基次郎『檸檬』の感想

「檸檬」は高校の教科書でも読んだが、これはその他にも短編を収録している。同様の本は各文庫から出ていて、収録作に若干の違いがあるようである。自分はなんとなく新潮文庫で読んだ。

大岡玲『黄昏のストーム・シーディング』の感想

(2003年6月読了) 氏の処女作「緑なす眠りの丘を」と表題作の中編2本を収録している。ちなみに氏は大岡信の子息である。だから何というわけではないが。 以下、それぞれ簡単に触れる。 緑なす眠りの丘を 何の不自由もない大学生の「ぼく」が纏うのは、ひた…

江國香織『冷静と情熱のあいだRosso』の感想

かつての恋人、順正を忘れようと、ミラノでジュエリー屋のアルバイトをして、図書館の本を読みながら、“完璧な”アメリカ人の彼氏と暮らす女性の話。彼女の名前あおいも、作者の名前のもじりか。KaoriにはAoiが含まれている。

辻仁成『冷静と情熱のあいだBlu』の感想

青は、阿形順正(あがた・じゅんせい)というちょっと作者を思わせる名の、絵画の修復士をしている青年の“流浪と再生”風の物語。流浪といっても物理的な移動はイタリア国内と東京くらいで、精神的な流浪というべきだろうか。

宮部みゆき『本所深川ふしぎ草紙』の感想

「ふしぎ」と付きながらも、多くは下手人や真相を追う、どちらかというと「不思議な事など何もないのだよ」(京極堂)と言わんばかりのミステリ仕立てになっている。

池澤夏樹『夏の朝の成層圏』の感想

氏の39歳の処女小説である。詩やエッセイなどはこれ以前にも書いていたらしいが。とある日本人が船から落ち、漂着した南方の島でのサバイバルと、孤独を愛する映画俳優との邂逅に端を発して語られる文明論といった趣きである。

長野まゆみ『少年アリス』の感想

夏の終わりの宵、友人の蜜蜂(人名である)が兄の色鉛筆を取りに学校へ行くというのに、主人公のアリスは付き合う。蜜蜂の飼い犬の丸耳を伴って2人が向かった夜の学校は幻想的な雰囲気を湛えており、そして雰囲気だけでなく、事実、幻想的な出来事に2人と1匹…

壺井栄『二十四の瞳』の感想

先生ものの草分けだが、思ったよりも学園生活について描かれている部分は少なかった。前半は先生の葛藤とか喜びとか、いかにもなのだが、中盤以降は概ね反戦小説である。

江國香織『つめたいよるに』の感想

どの話も、一定の「キレイキレイコード」のようなもので描かれている感じがする。そこが好みの別れるところだろうが私は面白く読んだ。

浅田次郎『薔薇盗人』の感想

表題の「薔薇盗人」は三島由紀夫の「午後の曳航 」へのオマージュとか。浅田氏における三島の影響はかなり大きいようだ。

安部龍太郎『血の日本史』の感想

断片的過ぎるので通史の勉強にはならないが、各時代の雰囲気を味わえるのは良い。

島田雅彦『僕は模造人間』の感想

ひねくれものの『仮面の告白』または『人間失格』(この小説の初読時、こっちは未読だったが)か。

田山花袋『布団・重右衛門の最後』の感想

『布団』は面白かった。姦通ものだがそれほど毒々しくもない気がする。『重右衛門』は忘れた。

三島由紀夫『仮面の告白』の感想

告白という私小説的な語りのくせに完全なる創作という騙し。今思えば漱石っぽい文体かもしれない。

大江健三郎『死者の奢り・飼育』の感想

暗い話だが、何故か死体洗い場が教会の中と感じられるような静謐さがある。

南木佳士『阿弥陀堂だより』の感想

作家の夫と女医の妻が田舎に帰って…という話だが、作家の裏話みたいなくだりは本筋とは離れたところで面白かった。

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