何か読めば、何がしか生まれる

純文学からラノベまで、文芸メインの読書感想文です。おおむね自分用。

日本近現代文学

新潮文庫『Mystery Seller』の感想

8人の作家による短~中編ミステリ8本を集めたアンソロジーである。以下にそれぞれの作品の概要を示し、感想を述べる。

筒井康隆『脱走と追跡のサンバ』の感想

題名の「脱走」という言葉からは、村上龍氏の『希望の国のエクソダス』を思い出す。が、社会システムとしての日本からの「脱出」を描いた『エクソダス』と、本作の「脱走」はいささか異なる。「狂騒」という言葉がふさわしいと感じる長編だった。

ひびき遊『ガールズ&パンツァー3』の感想

ライトノベル『ガールズ&パンツァー』の3巻の概要と感想。特にアニメ版との差異に着目してまとめています。

ひびき遊『ガールズ&パンツァー2』の感想

ライトノベル作品『ガールズ&パンツァー』の2巻についての概要と感想。 前巻に引き続き、大洗女子が戦車道の大会トーナメントを勝ち進んでいくのを物語の本線として、沙織を始めとする登場人物の心情が差し挟まれていく。2巻の主要な内容としては、大会第二…

ひびき遊『ガールズ&パンツァー1』の感想

『ガルパン』ライトノベル版は、概ねテレビアニメの物語に沿う形のノベライズで、全3巻である。まず今回は1巻について扱うこととして、概要と感想を記載する。

山田彩人『眼鏡屋は消えた』の感想

何となく手に取り、1本の長編ミステリだということで読む。端的に言ってしまうと、作品としては「可も不可もない」という印象。が、興味を惹かれる部分もあった。気になることは幾つもあったが、長編ミステリを読むという当初の目的は達せられ、その点は満足…

夢野久作『ドグラ・マグラ 下』の感想

非常に多くの要素、多くの文体(一人称・三人称・シナリオ風・古文・漢文・論文・新聞記事など)を含んでいて、それはそれだけ多くの解釈を許容するということを意味する。これは確かに巷で囁かれるとおり、再読するごとに違った読後感を得られるのかもしれ…

夢野久作『ドグラ・マグラ 上』(角川文庫)の感想

通常のミステリ(という表現も妙な気がするが)の埒外に位置し、ミステリというジャンル自体への批評性を備えたアンチ・ミステリで構成される“日本三大奇書”の1作である。角川文庫版の区分けに沿えば、上巻は概ね、作者による当時の精神科治療についての概説…

会田誠『青春と変態』の感想

『氷菓』シリーズで青春の光と影を垣間見てきたが、それらがとても綺麗だった反動で、よりドラスティックな青春というものを読みたくなり、この小説に思い当たった。 …書き連ねたが、一言にまとめれば、冒頭の「よりドラスティックな青春を描いた小説を読み…

亀井秀雄 監修/蓼沼正美 著『超入門!現代文学理論講座』の感想

内容としては、4つの現代文学理論を解説し、ひいては「主人公の気持ちにピタッと寄り添」うことが規範とされている(本書p.8)らしい、学校における国語教育に一石を投じたもの、と要約できそうである。ここでいう「現代文学理論」とは、20世紀になって登場…

米澤穂信『いまさら翼といわれても』の感想

〈古典部〉シリーズの最新作に当たる短編集である。まだ文庫版も出ていないので、単行本(上製本)で読んだ。例により、まずは各編のあらすじを記すことから始めよう。

米澤穂信『ふたりの距離の概算』の感想

前作は短編集だったが、今作は再び長編で、主観的には〈古典部シリーズ〉第2部といった趣がある。 いささかメランコリックな幕切れではあるが、あまり揚々としていても本シリーズらしくない。憂愁を内包して、彼らはどんな青春を送るのかを見続けたいと思う。

米澤穂信『遠まわりする雛』の感想

これまでの長編が、どちらかというと事件にピントを合わせていたのに対し、これらの短編は人物に合わせているという感じを受けた。「あとがき」によれば本書の主役は「時間」ということになるが、それは即ち、時間によって変容していく人物を描くということ…

米澤穂信『クドリャフカの順番』の感想

英文タイトルが語りかける通り、読者として神山高校文化祭を楽しめた、というのが一番シンプルな感想である。 ただ、奉太郎が語り手だったこれまでの2作とは異なり、古典部の4人が入れ替わり立ち替わり語り手となって物語が進行していくため、色々な味わい方…

米澤穂信『愚者のエンドロール』の感想

『古典部』シリーズ2作目である。前作『氷菓』(当該記事)の読了後、そのまま読み継ぐ。作中の時間軸的にも、発表順としても続篇と言ってよい作品である。 …ビデオ映画という劇中劇での殺人についての推理という構成は巧い。これならば、高校生の日常と非日…

米澤穂信『氷菓』の感想

既に書いてきた通り、ミステリは幾つか読んできたのだが、その殆どが殺人事件を扱うものだった。いつのまにかそれが当然のように思えており、いわゆる“日常の謎”を扱う類の作品は敬遠していたのが偽らざるところである。本作もそこに属すため、手が伸び難か…

野村美月『下読み男子と投稿女子』の感想

文芸作品の新人賞の予選のようなものとして、著名な審査員ではなく編集者や出版関係者が応募原稿を読む「下読み」という段階が存在する。私は未経験だが、知人のライター氏などはたまにやっているようである。 本作の作者である野村美月氏もまた、その下読み…

歌野晶午『長い家の殺人』の感想

現代日本のミステリである。布団の中で二晩読んで読了した。 「現代」といっても発表は1988年なので、読んだ当時としても一昔前の作品である。現在(2016年)からすると四半世紀以上前の作品であることに驚くが、それはともかく、まずは概要を示す。

村上春樹 文/稲越功一 写真『使いみちのない風景』の感想

写真つきの随筆である。というよりは、稲越氏の写真集に少しずつ挿入されている随筆、と表現すべきだろうか。1ページ当たり長くても8行程度の文章が、概ね2ページにつき1ページの割合で挟まれている。そうした形式による100ページほどの表題作と、私が読んだ…

矢口史靖『ウォーターボーイズ』の感想

その頃、映画『スウィングガールズ』を観たので、矢口監督作品の小説版を読む気になった。 ネットの評価でも散見したが、確かに「(『スウィングガールズ』と)だいたい同じ」な感じは受けた。停滞した高校生たちと、何かちょっと珍しい活動と、いい加減な指…

万城目学『鹿男あをによし』の感想

既に『鴨川ホルモー』、『プリンセス・トヨトミ』は読んだのだが(いずれ過去の読書として感想を書く)、作者の第2作に当たる本書は手つかずだったので読む。作中では神無月すなわち10月が重要な時期として扱われているのだが、その時期に読んで感想を書ける…

萱野葵『段ボールハウスガール』の感想

200万円を盗まれた女の無軌道な路上生活を描いた表題作と、仕事を辞めた主人公とアル中だった弟の暮らしを描いた「ダイナマイト・ビンボー」を収めている。

霧舎巧『ドッペルゲンガー宮《あかずの扉》研究会流氷館へ』の感想

もっと新本格ミステリを読もうと思い、手に取る。作者は本作によって1999年にデビューした「20世紀最後の新本格派新人」とのことである。当時、日曜に読み出し、その日のうちに残り100ページまで読み進め、翌月曜の深夜に読了した。とある大学の《あかずの扉…

森鴎外『阿部一族・舞姫』の感想

鴎外の処女作、擬古文の「舞姫」を巻頭に収録した短編集である。他に同じく擬古文体の「うたかたの記」、以下は言文一致体の「鶏」「かのように」「阿部一族」「堺事件」「余興」「じいさんばあさん」「寒山拾得」とその付記「附寒山拾得縁起」を収める。 ま…

新海誠『小説 君の名は。』の感想

映画の公開に先立ち、読んでみることにした。新海誠の映画は恐らく全て観ているが、特にファンというわけでもない、と自分では思っている(けれど公開初日に見に行こうとしているのは、やはりファンを自称すべきだろうか)。 ともあれ、以前から『秒速5セン…

ほしおさなえ『活版印刷三日月堂』の感想

1つ前の『終業式』と同じように、Twitter上で言及されているのを複数回見て、たまには最新刊を読もうと思い手に取った。活版印刷を営む若い女性を中心に描かれた連作短編集である。

姫野カオルコ『終業式』の感想

Twitterで幾人かが読んでいるのを見て、興味を惹かれて読む。ちょうど『錦繍』について書いて、現代で書簡体小説は可能か、ということを考えていたこともあって気になったのである。 書簡体小説がらみの私の思惑がどうなったかは置いておいて、まずはあらす…

新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー2』の感想

間が空いたが2巻についても述べよう。1巻については以下のリンクから。 まずはあらすじを述べる。 あらすじ 花火大会3日前の放火は、大事には至らず済んだ。しかし、「ぼく」――卓人(たくと)達がアジトにしている喫茶店〈夏への扉〉には、またも放火犯によ…

新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー1』の感想

刊行から数年後に入手し、5年以上積読にしていたものを、不意に読みたくなって引っ張り出してくる。なぜ今そんな気になったかというと、新海誠氏の新作映画のせいかもしれない。それか、Twitterを始めてフォローしたアカウントの幾つかがSF好きだったからか…

水村美苗『続明暗』の感想

(2004年11月読了) 以前、ある程度まとめて漱石を読み、そのまま漱石のパロディやオマージュも探したりしたのだが、それらの発見順では4つ目になるだろうか。絶筆『明暗』の続き、という設定で書かれた小説である。『明暗』を読んだのが前年のことなので、…

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